08年度ベスト10

謹賀新年
みなみなさま、あけましておめでとうございます。
今年も何卒よろしくお願いいたします。
恒例の08年度ベスト10は↓のように相成りました。
相変わらずの歴史・ノンフィク好きです。
    ☆   ☆
C・ギンズブルグ 『糸と痕跡』みすず書房
三浦国雄 『「朱子語類」抄』講談社学術文庫
吉村克己『満身これ学究』文藝春秋
T・ホーヴィング『ミイラにダンスを踊らせて』白水社
平松剛『磯崎新の都庁』 文藝春秋
石持浅海『君の望む死に方』祥伝社新書
池澤夏樹 『雷神帖』 みすず書房
門田隆将『なぜ君は絶望と闘えたのか』新潮社
脳科学総合研究センター『脳研究の最前線上・下』講談社ブルーバックス
齋藤美奈子『本の本』筑摩書房
   ☆   ☆
▽今年は、なんだかんだで例年よりも読書時間がとれなかったような気がする。
▽そんな中でも昨年のベスト1は、カルロ・ギンズブルグの『糸と痕跡』。彼の学問テーマそのものは、ぼくとしてはそんなに興味があるわけではないのだが、歴史事実とされる事柄を事実と論証する方法、そしてそれに基づいてそこから一段高い理論にジャンプする、その飛躍へのもっていきかたに興味があって仕方がない。歴史事実と理論をどう結びつけるのか、という点で、前著の『歴史を逆なでに読む』と同様大いに参考になる。
▽三浦さんの『「朱子語類」抄』。 訓読するのは難しいとされた、口語と文語の入り交じった『朱子語類』を見事に訓読している職人技に一票。原本は、76年に刊行されたものだけど、今回の文庫版では、島田虔二さんなどからの指摘をふまえ加筆修正されたもの。京大人文研ラインの先生はいい仕事します。
▽ 吉村克己『満身これ学究』。ネットであらすじを読んだ時点では、てっきり書誌学で業績をあげた人の評伝だと思っていたのだけど、書誌学とは別に、古筆学という一ジャンルを確立した小松茂美さんという人の評伝。広島で原爆の被害をうけながらも一命をとりとめ、鉄道員として働きながらも学問への思いさめやらずに、池田亀鑑の門をたたき、41歳の時、『平安朝伝来の白氏文集と三蹟の研究』で学士院賞を受賞。それ以後も研究にうちこみ、論文・著作を続々と刊行。83歳の現在も、睡眠時間2、3時間で、後白川法皇と日本男色列伝の研究に打ちこんでいるという。すごい人がいるものです。